イラストレーター、インボイス制度の導入で課税事業者に?どうする
10月になってしまいました、始まったインボイス制度。
個人事業主、フリーランスの皆さんは気にしていらっしゃったでしょうが、結局迷って迷ってここまで来てしまった、という人も少なくないはず。
自分がインボイス制度が始まることで岐路に立たされている!どうしよう!と思っている方へ。
ここでは、個人事業主フリーランス、特にイラストレーターに着眼して、消費税やらインボイス制度やら課税免税やら、そして結局メリットデメリットは?について書きました。
目次
制度(言葉)の確認
さて、まずは言葉の確認から。
消費税
消費税は、
本来国に治めるものです。
課税事業者・免税事業者
免税事業者は、課税対象とならない事業者。
ようは、消費税を国に払う(納める)人と、払わない人を指します。
そう、免税事業者は消費税を国に治めていない人、ということになります。
今までは 免税事業者という存在もOKと国でも認識されていたのですが、ここに杭を打ってきたのが今回のインボイス制度です。
インボイス制度
そもそも、インボイス(適格請求書)とは、
レシートとか請求書に、登録番号を載せて「誰が発行したものよー」と示せるようにするってことですね。
これを制度化したものがインボイス制度です。
そしてインボイス制度とは、
<売手側>
<買手側>
国税庁HPより
売り手は、買い手が消費税納めている人だった場合、登録番号の載った請求書を渡さなくちゃ、買い手が困っちゃうからね!
買い手は、消費税を納めているなら、売り手から登録番号の載った請求書を貰わなくっちゃ、損しちゃうからね!
ってことです。
簡易課税制度
そしてフリーランスでインボイス制度について調べたら気になったであろうこの簡易課税制度。
簡易課税制度とは、
事業 区分 |
みなし 仕入率 |
該当する事業 |
第1種 事業 |
90% | 卸売業 (他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業) |
第2種 事業 |
80% | ・小売業 (他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する第1種事業以外のもの) ・農業、林業、漁業(飲食料品の譲渡に係る事業) |
第3種 事業 |
70% | ・農業、林業、漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く) ・鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含む) ・電気業、ガス業、熱供給業および水道業 ※第1種事業、第2種事業に該当するものおよび加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除く |
第4種 事業 |
60% | 第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業、第6種事業以外の事業(例:飲食店業など) ※第3種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第4種事業に該当する |
第5種 事業 |
50% | ・運輸通信業、金融業、保険業、サービス業 ※飲食店業に該当する事業を除く ※第1種事業から第3種事業までの事業に該当する事業を除く |
第6種 事業 |
40% |
不動産業 |
みなし仕入れ率というのは、だいたいこのくらい仕入れの時に消費税払ってるやろ?ってやつなので、要はここの数字が大きいほど納める消費税が少なくなるってことですね。
じゃあ結局どれがいい??
それでは、免税事業者のままでいた方がいいのか、課税事業者になったほうがいいのか、課税事業者になったとして簡易課税制度を使ったほうがいいのか等まとめます。
課税事業者のメリット
「支払った消費税 > 預かった消費税」となる場合、還付を受けることができる
課税事業者は、消費税を納めなくてはならなくなるので、損をする、という印象ばかりが走っていますが、支払った消費税が、お客さんから預かった消費税を上回る場合、還付を受け取ることができます。
「払いすぎてるから、返したげるー」ってやつですね。
この支払った消費税というのは、普段物を買う時にすでに払っている分です。
確定申告時に必然的に、「私はすでにいくら分払っている!」と申告することになりますね。
法人に嫌がられない
私もすでに聞かれました、「インボイス制度の登録していますか?」ひええ
でも聞くのは当然のこと。ほとんどの法人はそもそも消費税を払っていたんだから、インボイス制度の登録も当然のようにやっています。
そこでインボイス制度の登録をしていないフリーランスや個人事業主に仕事をふってしまうと、その法人が損をしてしまいますからね。
課税事業者のデメリット
消費税を払わなくてないけない
これ一択です。
一般課税の人は10%、簡易課税制度を利用している人は計算式に応じて払う義務が発生します。
自分で消費税を計算しないといけない(一般課税)
消費税を納める以上、どのくらい預かってます!と確定申告しないといけません。
とはいっても、今は会計ソフト優秀なので、簡単に計算できるかもです。
免税事業者のメリット
消費税を払わなくていい
今まで通り、働いてOK!
免税事業者のデメリット
法人等のインボイス登録した会社からの仕事がなくなるかも
上記の通り、会社が損をしてしまうので、登録をしていないフリーランスは避けられるかもしれません。
簡易課税制度がいいのか?
じゃあ、ちょっと一般課税は高そうだし、簡易課税だとよく分からんけど安くなりそうや…と思った人ちょっと待った!!!!!!!
期間限定ではありますが、インボイス制度のスタートに伴って、小規模事業者に向けた特例が発表されています。
2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間となります。
国税庁HPより
ええと、ようするに、
インボイス制度で急に10%納めるってきついやろ?だけん、令和8年までは10%の2割だけ納めてくれたらいいけん!ってことですね。
10%の2割が免除、つまり、80%免除ということになります。
えっっ簡易課税制度…↓
事業 区分 |
みなし 仕入率 |
該当する事業 |
第1種 事業 |
90% | 卸売業 (他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業) |
第2種 事業 |
80% | ・小売業 (他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する第1種事業以外のもの) ・農業、林業、漁業(飲食料品の譲渡に係る事業) |
第3種 事業 |
70% | ・農業、林業、漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く) ・鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含む) ・電気業、ガス業、熱供給業および水道業 ※第1種事業、第2種事業に該当するものおよび加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除く |
第4種 事業 |
60% | 第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業、第6種事業以外の事業(例:飲食店業など) ※第3種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第4種事業に該当する |
第5種 事業 |
50% | ・運輸通信業、金融業、保険業、サービス業 ※飲食店業に該当する事業を除く ※第1種事業から第3種事業までの事業に該当する事業を除く |
第6種 事業 |
40% |
不動産業 |
つまり、第1種事業以外の人は、一般課税の方が節税になるってことになります。
簡易課税制度には、2年間は簡易課税制度で消費税を納めてねっていう決まりがあります。
また、簡易課税制度は前もって納める消費税を計算する制度なので、大きな事業投資をした年も、普通に消費税を払わなくちゃいけません(一般課税なら、ここで還付がもらえたりする)。
イラストレーターはどうする?
なら、イラストレーターの人はどうしましょう?
ざっくりいうと、
受注先が一般顧客(俗にいう「個人のお客さん」)なら、課税事業者になるのは見送り、
受注先が課税事業者(インボイス登録済)で一件当たりの単価が10,000円以下なら課税事業者になるのは見送り、
それ以上の方は、課税事業者になる(インボイスの登録をする)ことを要検討、です。
受注先が一般顧客なら、課税事業者になるのは見送り
個人のお客さんというと「似顔絵書いてください」とか「アイコン書いてください」とか多いと思います。
個人のお客さんは,消費税を当たり前のように払っていますが、イラストを買うとなると、経費ではなく「趣味で」という範疇のことがほとんどです。
なので今まで通り販売しても、誰が出すお金も変わらないということになります。
ハンドメイド作家さんなんかは、いまのところインボイスの登録を気にしている方は少ないように感じます。
受注先が課税事業者で一件当たりの単価が10,000円以下なら課税事業者になるのは見送り
「受注先が課税事業者(インボイス登録済)で一件当たりの単価が10,000円以下なら課税事業者になるのは見送り」についてはどうしてかというと、少額特例というものができたからです。
1 少額(税込1万円未満)の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除ができます。これは取引先がインボイス発行事業者であるかどうかは関係なく、免税事業者であっても同様です。
国税庁HPより
とな。
つまり、税込の値段が10,000円以下なら、受注側も発注側もお金は今まで通りで大丈夫ですよってことです。
ただ、注意したいのは「少額特例は税込1万円未満の課税仕入れが適用対象」ということ。
6,600円のものと7,700円のものを買うと、請求書は合計14,300円となりますよね。これはアウトです。
詳しく知りたい人↓
少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置の概要)の概要
受注先が課税事業者で一件当たりの単価が10,000円以上なら、課税事業者になることを要検討
これは、人によっては仕事量に関わってくることになります。
大手によっては,「課税事業者でも免税事業者でも、今まで通り報酬は払うよ」ってとこがあるみたいですが、それは財力があるから。
中小企業が消費税の払い損を容認してしまうときついのではないかと思います。
単発の仕事が多く、単価が一万円以上という人は課税事業者になることを検討しましょう。
消費税を払わなくてはいけなくなるというデメリットは発生しますが、企業からの信頼と単価をあげる機会というメリットもあります。
なんとなくわかったでしょうか???
このメリットデメリットを踏まえて、結局自分はどうするのか、考えてみてください!
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